どうにも回らない飲食店の現場の地獄絵図感

先日Twitterを見ていたら、衝撃を受けました。

このツイートの内容自体もそうですが、何よりわたしが勤める飲食店も似たような状況にあるというのが衝撃でした。

飲食店の営業は、一人ではムリです。

直接お客さんに接するところだけでも、注文の受付、調理、料理の提供、片付け、配膳、会計、清掃などの仕事があります。

時間帯によっては席は使い終わった皿だらけ、入り口では長蛇の列、料理は運ばれてこないという状況になるのです。

勤めているのは、年間10%以上成長している上場企業ですが現場には同じような状況があります。

人手不足、低賃金、長時間労働の不人気業界とも言われる飲食業界ですが、その現場には地獄絵図感が漂っているのです。

①人材不足の状況が地獄絵図

現場はとにかく人材不足です。採用面接は、社員もアルバイトも受ければまず落ちることはないでしょう。人の量も質も足りていません。

店舗スタッフは、社員一人か二人とアルバイトです。店長がいる店は、社員は店長のみ。

店長代理(店長がいない店の場合、筆頭社員がこのポジションに指定される)なら社員は二人といった具合です。

アルバイトの募集広告、紹介制度、口コミによる募集などの手は打っていますが、なかなか集まりませんし入れ替わりも激しいです。

土日祝は、人が集まりにくく社員が15時間近くシフトに入ったり、店に泊まり込みで連勤したりすることも少なくありません。

このような中、

・人件費を抑えろ
・お客様満足度を上げろ
・アルバイトは辞めさせるな
・社員はできる限り残業するな

という指導もあって、なかなかの地獄絵図感が広がっています。

②「本社と現場」に漂う絶望感

飲食の現場では「本社と現場」という言葉を使うことがあります。

これは、本社が企業理念など「それっぽいこと」ばかりを発信する上、現場の関係する業務予定の組み方が現場を見ず一方的なことを揶揄した言葉です。

本社も少ない人員で業務を回しているのでしょうから、気持ちはわかります。

ただ、このように「本社と現場」という言葉ができ、会社(チーム)の中で意思疎通ができなくなってきているのです。

・いついつまでに課題提出してください
・メール流してるので確認してくださいよ
・この日に会議をすることになりました、振り替えはできません

やっと一日の営業が終わった、やっとシフトが完成した、ようやくこの日に休みが取れるという心理状況での本社からの要望には絶望することがあります。

③急な店舗展開で、現場はまさに地獄絵図

極めつけは、「急な店舗展開」です。

ここまでで紹介した人材不足、「本社と現場」に拍車がかかります。

人が揃わない、定着しない、育たないという人材不足、本社と現場で足並みが乱れる中で会社は、年間十数以上というペースでの「急な店舗展開」を進めています。

一店舗当たり社員が一人以上、アルバイトも十数名以上必要なのを考えれば、それだけの人を揃え、育て続けなければいけません(これも現場店舗の仕事)。

会社は「国内店舗数いくつ」というのを目標にしていますが、時期やその先に何を目指しているのかというイメージはぼやけていますし、従業員間での共有は弱いと感じます。

創業時メンバーの部長クラスの社員には「阿吽の呼吸」と言ってもいいほどの「思い」の共有がなされていますが、一般社員は入れ替わりも激しく浸透しきっていません。

「どんなに労働時間が長くなっても最高のものをお客さんに提供しよう」という「思い」は中途採用組が多い現状、新卒の入れ替わりが激しい中では定着まではいかないのです。

人材が「思い」の面も含めて成長しきる前に店長クラスの仕事を任せたり、アルバイトが揃わない状況で長時間労働を強いたりする中での「急な店舗展開」は地獄行きなのではないでしょうか。

最後に

冒頭に紹介した飲食店の窮状。

このツイートではサイゼリアのある店舗が取り上げられていますが、どこの飲食店にも似たような状況があるのではないでしょうか。

飲食店に漂う、どうにも回らない現場の地獄絵図感。

成長を目指した消耗戦の先には、さらなる消耗しかありません。

仮に会社は生き残ったとしても、今度は別の新規参入企業との消耗戦が始まるのです。

消耗戦のあるところには地獄絵図しかありません。

成長を求めて消耗戦を続けるのではなく、従業員が働きやすい環境づくりも大切にしながらお客さんが満足できる「地に足の着いたサービス」ができるよう現場にはとにかく時間がほしいのです。

ライター
めんおう

専業ライター。大学卒業後、防衛省にて10年勤め、民間企業を経てフリーランスへ転向。ネット、働き方、英語、取材などを中心に書いています。クライアント様の伝えたいことを、万策をもってお伝えします。
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